自力で会社を設立する@
情報提供の趣旨
士業の主たる仕事は、当事者の法的手続きや事務処理の代理・代行をすることです。
つまり、本人がおこなえるのであれば、別に士業に頼む必要はないわけですが、実際には、多くの当事者が専門士業に依頼をしています。
その理由のひとつには、一般に法的な手続きは煩雑であり、法律用語や主管官公署の解釈にも明るくないと、うまく進めることができないという事実があるでしょう。
しかし、一般の市民向けに手続きの細部までをやさしく説明した手引書がないということも、理由の一つだと思われます。
なにやら実態のわからない、小難しく面倒くさいものだという印象が、「自分で手続きをする」という選択肢消し去ってしまっている面があるように思えます。
私も士業のひとりとして、士業への依頼を促進したい気持ちはもちろんあります。
ただ、依頼する場合であっても、当事者が「自身で手続きをすること」と「依頼すること」のメリットを十分に検討し納得できる情報は必要ではないでしょうか。
そのような趣旨から、「会社設立のながれ」で触れた手続き事項について、「定款」と「会社設立登記申請書類」のつくりかたについて補足して説明します。
想定する会社の条件、要件は以下のとおりです。
発起人1人の株式会社
発起設立
取締役会を置かない
監査役、会計参与を置かない
現物出資なし
株式公開をしない(株式譲渡制限会社)
ただし、どうしても一般的なケースを想定せざるを得ないため、個別具体的な手続きの際には、必ず過不足や、確認が必要な事項が生じます。
官公署と繰り返し確認を取り合い、時に書類の書き直しや再提出などもおこないつつ、手続きをすすめていく覚悟が必要だということをご理解ください。
定款をつくる
定款の表紙
表紙については「定款の作成・認証手続き」で触れたとおりですが、表紙には、「○○株式会社 定款」という表記のほかに、作成日、公証人認証日、会社成立日を記載しておくようにします。定款作成時点で実際に日付を入れるのは作成日だけです。
収入印紙台紙
紙定款の場合、4万円の収入印紙を貼付しなければなりませんので、表紙に続いて2頁目に、収入印紙を貼る台紙を用意します。
といっても、白紙の中央に収入印紙を貼り、代表者個人の実印で消印をするだけです。
また、定款は全部で3通作成しますが、収入印紙の台紙を用意するのは、1通(公証人役場保存用)だけです。
なお、収入印紙は、万一定款に不備があった場合のことを考えて、認証されたあとに貼付するようにしましょう。
定款本文 「第1章 総則」
| 見出し | 条数 | 留意事項 | |
|---|---|---|---|
| 商号 | 第1条 | 商号を記載します。 | 詳解 |
| 目的 | 第2条 | 目的を箇条書きで記載します。 定款認証後に目的を追加する場合には変更登記が必要になりますので、当面実施する事業だけでなく、将来行う予定のある事業も記載しておくようにします。 また、目的内容を広範に解釈できるよう、最後に「前各号に付帯関連する一切の事業」という一文を入れておくようにします。 |
詳解 |
| 本店の所在地 | 第3条 | 本店の所在地を記載します。郵便番号は不要です。 本店所在地は、最小行政区画(市区町村)までの記載とすることができます。そうすることで、同一行政区画内であれば移転の際に定款の変更をせずに済みます。 なお、モデルでは最小行政区画で記載しています。 |
詳解 |
| 公告の方法 | 第4条 | コストの観点から、 「官報に掲載してする」 方法が一般的です。その他、 日刊新聞紙に掲載する方法や、自社のウェブサイトに公告を掲載する電子公告という制度もあります。詳しくは「詳細」をご覧ください。 | 詳解 |
定款本文 「第2章 株式」
| 見出し | 条数 | 留意事項 | |
|---|---|---|---|
| 発行可能株式総数 | 第5条 | 公開会社では設立時株式数の4倍(最大)に設定することが多いのですが、株式譲渡制限会社でも4倍を目安に設定しておけば問題ないでしょう。 | 詳解 |
| 株券の不発行 | 第6条 | 会社法では、株券の不発行が原則です。定款に定めることにより発行できることになります。 株式譲渡制限会社の場合は、不発行の旨記載しておくだけで良いでしょう。 |
詳解 |
| 株式の譲渡制限 | 第7条 | 日本の企業のほとんどが株式譲渡制限会社です。一人で起業するケースは当然に株式譲渡制限会社と考えてよいでしょう。 | 詳解 |
| 株式の相続人等に対する売渡請求 | 第8条 | 相続等によって株式を取得した者に対して、会社が売り渡を請求できる権利を規定します。 ただし、身内で相続をすることを想定している場合には、規定しないほうが良いでしょう。 |
詳解 |
| 株主名簿記載事項の記載の請求 | 第9条 | 株式を取得した者が株主名簿に記載を求める際の手続きについて規定します。 定型的な文面ですが、モデルのように表記すれば問題ないでしょう。 |
詳解 |
| 質権の登録及び信託財産表示請求 | 第10条 | 株式に質権や信託財産を設定した者がその旨を株主名簿に記載するよう求める場合の手続きを規定する条項です。 | 詳解 |
| 手数料 | 第11条 | 第9条、第10条の請求の際に会社に手数料を支払う旨を定める条項です。 | 詳解 |
| 基準日 | 第12条 | 会社の株主が誰であるかを特定するために、基準日を定款に定めておきます。 | 詳解 |
定款本文 「第3章 株主総会」
| 見出し | 条数 | 留意事項 | |
|---|---|---|---|
| 招集及び招集権者 | 第13条 | 招集時期、招集権者、招集通知の方法について規定します。 | 詳解 |
| 株主総会の議長 | 第14条 | 取締役社長を議長とするのが一般的です。 | 詳解 |
| 決議の方法 | 第15条 | 普通決議は、出席した議決権を行使できる株主の議決権の過半数をもって行う旨を規定します。 | 詳解 |
| 議事録 | 第16条 | 株主総会の議事録の作成と保管について記載します。 | 詳解 |
定款本文 「第4章 取締役及び代表取締役」
| 見出し | 条数 | 留意事項 | |
|---|---|---|---|
| 取締役の員数 | 第17条 | 取締役の数を規定します。1人でスタートする会社であっても、将来取締役が増えたときのことを想定して(見本のように)「3名以内」等、複数を表記することもできます。 | 詳解 |
| 取締役の資格 | 第18条 | 当会社の株主の中から選任する旨の規定をします。ただし、公開会社ではこの定めを置くことができません。 | 詳解 |
| 取締役の選任 | 第19条 | 株主総会で取締役を選任する方法を規定します。 | 詳解 |
| 取締役の任期 | 第20条 | 取締役の任期は、2年が原則ですが、株式譲渡制限会社は、定款に定めることにより最長10年まで伸長することができます。 | 詳解 |
| 代表取締役及び社長 | 第21条 | 取締役を複数名置く場合の代表取締役の選任方法、社長の定義を記載します。 | 詳解 |
| 取締役に対する報酬等 | 第22条 | 取締役の報酬及び退職慰労金を株主総会の決議によって決める旨を記載します。 | 詳解 |
定款本文 「第5章 計算」
| 見出し | 条数 | 留意事項 | |
|---|---|---|---|
| 事業年度 | 第23条 | 会社の事業年度を規定します。 日本では、4月1日から3月31日とすることが多いですが、免税期間や繁忙期を考慮した設定方法もあります。 |
詳解 |
| 剰余金の配当 | 第24条 | 株主、登録株式質権者への配当金の支払いについて規定します。 モデルのように表記すれば問題ないでしょう。 |
詳解 |
| 配当金の除斥期間 | 第25条 | 配当金が受領されなかった場合の扱いを規定します。モデルのように表記すれば問題ないでしょう。 | 詳解 |
定款本文 「第6章 附則」ほか
| 見出し | 条数 | 留意事項 | |
|---|---|---|---|
| 設立に際して発行する株式 | 第26条 | 設立時の発行株式数と1株の価額を記載します。 | 詳解 |
| 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額 | 第27条 | 設立時の出資金の額を記載します。 | 詳解 |
| 最初の事業年度 | 第28条 | 最初の事業年度が、会社成立の日から、○年○月○日(最初の事業年度の終わり)である旨を記載します。 | 詳解 |
| 設立時取締役 | 第29条 | 設立時取締役の氏名を記載します。 | 詳解 |
| 発起人の氏名ほか | 第30条 | 発起人の氏名、住所、割り当てを受ける株式数、株式と引換えに払い込む金額を記載します。 住所は印鑑証明書どおりに正確に記載します。 |
詳解 |
| 法令の準拠 | 第31条 | 最後に、会社設立のために本定款を作成する旨を記載と日付を記載し、発起人が記名押印をします。 | 詳解 |
| - | - | 最後に、会社設立のために本定款を作成する旨を記載と日付を記載し、発起人が記名押印をします。 | |
これで定款は完成です。綴じ方は、単にホチキスでとめるだけでかまいません。 さらに、すべてのページについて、後から抜き差しができないように、継ぎ目に発起人の印鑑(契印)を押すようにします 。
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